会長挨拶

 この度、第12回日本医療教授システム学会総会・学術集会を「これからの12年を設計する」というテーマで開催することになりました。
 日本医療教授システム学会は2007年12月に任意団体として設立され2019年5月に一般社団法人化されました。今回の学術集会では本学会のこれまでの12年の活動や成果と社会や医療教授システムに関わる学術領域の動向を縦断的・横断的に俯瞰し、本学会のこれからの12年の基本的な設計図と設計図に基づく具体的な成果物を提示したいと考えています。
 本学会は2000年当時のトレンドであった患者安全とシミュレーション教育というコンセプトに反応し設立に至りました。本学会でも患者安全を達成するために必要な知識と技術を教えるためにさまざまな活動を行ってきました。このタイプ(将来必要となる知識体系と技術を教える、learn toタイプ)の学習だけでは臨床のパフォーマンスを向上することが難しいことから、learn fromタイプ(失敗から学ぶ:事例ベース推論、精緻化理論)の学習の重要性が指摘されています。本学会ではlearn fromタイプの学習を支援するためにゴールド・メソッド(Goal-Oriented Learning Design:GOLD method)を開発し患者安全TeamSim及び救急活動と臨床推論として実装化しました。
 ゴールド・メソッドは卒前教育・卒後研修と生涯教育をシームレスに連携し「できる」医療職に育つ/育てる学び方/教授法で、臨床での実践能力を初学者のうちから効果的・魅力的に学習することを支援し、将来のキャリア発達の基盤となる認知的方略を獲得・構築していきます。学術集会では招待講演「医療者の働き方改革(予定)」(立教大学経営学部教授中原淳)を行います。「残業学」(中原淳)のなかで、離職を防ぎ優秀な人材を確保するためのコツとして「人材開発の質で個人の成長を支援する」ことがあげられていますが、これを達成するテクノロジーがゴールド・メソッドになります。
 今回の学術集会では医療職個人のキャリア発達そして病院・ケア施設や教育機関や地域医療・包括ケアの人材育成働(「できる」医療職に育つ/育てるしくみ)、そして医療者の働き方改革に関わる医療教授システムのテクノロジー=希望のためのテクノロジーをお示しし、参加者それぞれのこれからの12年を設計して頂く一助になればと考えています。本学会に初めて参加される方のためにインストラクショナル・デザイン入門、現場の実践者には実践事例を論文にまとめるための教育講演、さらに併設セミナーでは多彩なメニューを準備しています。学術集会・併設セミナーの場で参加者同士の対話による学びを楽しみ仲間を見つけると同時に、明日からのエネルギーをチャージしてください。

第12回日本医療教授システム学会総会・学術集会
会長 池上敬一
三条しただ郷クリニック 院長、日本医療教授システム学会 代表理事